新緑ノスタルジア

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ミュージカル「テニスの王子様」4thシーズンをこれからも見ていきたい宣言

2021年、初演から18年を迎えたミュージカル「テニスの王子様」。
初演からキャスト、脚本、歌、演出などを変えながらも、根幹の部分はずっと変わらないまま4thシーズンに突入するかのように思えた。
しかし突然の「脚本家、演出家をはじめとしたスタッフを一新する」との報せは、私にとっては困惑と不安を運んでくる要素でしかなかった。
初めてテニミュをちゃんと見たのが去年で、

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円盤や配信を使って後追いで見てばかり*1の私ですら、馴染みのある好きな曲が聴けなくなってしまうこと*2、全く違う演出によって原作が持っている面白味が薄れてしまったらどうしよう……とあれこれ考え込んでしまっていた。
しかしいざ観てみたら、その不安は杞憂だったことがわかった。3rdまでとは違った視点から、「テニスの王子様」という漫画の持つエンタメ性、面白さに挑もうとしていることが感じられたのだ。

 

ストーリーのこと

物語は桜の舞う卒業式から始まる。えっ卒業式!?と思ったが、すぐに原作42巻(無印の最終巻)の巻末に収録されている小説のことだと気付いた。手塚の感動的な答辞で無事に卒業式が終わったかと思いきや、そこに現れる越前リョーマ
「部長!悔いが残ってしょーがないんスけど」
「俺ともう一度、戦ってもらえますか」
そして、オープニングともいえる全体曲が始まる。よく「歌詞の雰囲気が3rdまでと違う」と言われているが、ここでは今までのテニミュと使っている音の感じが違う気がして、4thシーズンが目指したい方向性が分かった気がした。ああこれは「青春の爽やかさ」を描きたいんだな、と感じた。原作もたしかに熱い展開はたくさんあるが、特に無印の関東大会あたりまでは、どこかさらりと駆け抜けていくようなところもあると感じているので、そう言うところを押し出したいのかもしれないと推測した。
そして時は一年前に巻き戻る。*3ここは舞台という形式だからこそわかりやすく伝わる演出だと感じた。

 

第一話の電車シーンからスタート。佐々部ががっつり出て来ることに動揺した。全体を通して見ると、他にも玉林中の二人や九鬼貴一、何より青学の2年非レギュラーメンツも登場していた。新テニミュから導入されたテニミュボーイズ制度のおかげである。新テニミュの頃はなぜテニミュボーイズが必要なのかあまりピンと来ていなかったが、1年トリオにカツアゲを試みる池田と林が出てきたときにものすごく嬉しくなったので、ようやくこのシステムの必要性を理解できた。テニプリはどんなに出番が少ないキャラにもファンががっちりついているからこそ、キャラを登場させることそれ自体がいい方向に機能するのだと思う。
特に、荒井が登場した時には、この燻りながらもレギュラーの先輩のことを誰よりも尊敬してる荒井が一年後にはストイック一派としてレギュラージャージを身にまとってるんだよな……と感慨深いものがこみ上げてきた。

ただこればっかりはもう仕方のないことなのかもしれないが、それによって桜乃や杏のような女子キャラ、竜崎先生のような大人たちの不在がかえって強調されたように感じられたので、そこに対するモヤつきは残った。*4

 

校内ランク戦での海堂、乾との戦い。4thシーズンではこれまでのボールに見立てた小さいピンスポと打球音でのラリー表現がなくなっていた。その代わり、決め技はセンタースクリーンやネットオブジェの代わりとして使用されることもある衝立状のオブジェにエフェクトが投映されていた。
これ以降も続くこの演出そのものに賛否両論があるようだが、個人的には(実際のテニスではあんなに派手にカンカンコンコンした打球音は鳴らないので)試合のリアリティが増して良いと思っている。あとこれは初めて知った時驚愕だったのだが、ボールに見立てたピンスポを高速で動かすのは想像以上に負担がかかりピンスポ担当の照明さん(一人しかいない)は終わった後アイシングしていたそうなので、今後も長く続けたいという意味でも新しい方法が模索されたのは良いことだと思う。
ここでリョーマより負ける側の海堂・乾に焦点が当たる(ソロ曲もある)のは、能力などをアピールすることで強力なレギュラーすら打ち負かすリョーマの強さをかえって強調させているのかもしれないと思った。ここは演出側の意図を知りたい。

 

物語は進み、今回の対戦校である不動峰の過去に焦点が当たる。かつて橘さんを演じた北代さんが、不動峰の面々に理不尽に襲い掛かる卑劣な顧問を演じていることに「文脈」を感じてしまった。
「2年の橘だ!俺より強いと思う奴は前に出ろ!」
そんな卑劣な顧問、先輩の前に突如現れた橘さん。この台詞は演者の声が吹き込まれることでより気迫を感じた。そりゃあ皆ついていきたくなるよなあと。だがこの橘さん(GAKUさん)は新テニミュの橘さんを経験しているので、オタクは勝手に二翼のあれこれを経たうえでなお、テニスを続けようと思った彼の心情みたいなものまで汲み取ってしまった。つい2年メンツと同じ視点で神格化にも近い視点で見てしまうが、彼もまた一人の人間であり、それなりの緊張感・不安を抱えながらもそれでも覚悟してここに来たんだろうと深読みした瞬間であり、2.5次元舞台特有の「文脈」を感じた瞬間でもあった。
顧問につかみかかる橘さん、その後すぐに手を出そうとするのが伊武*5で、他に突っかかっていったのが神尾と内村、止めに入ろうとしたのが桜井、森、鉄なのもよかった。これも漫画だけだとタイミングの表現が難しい部分だと思うので、舞台(身体表現)だからこその生々しさだったと思う。

 

そして地区大会が始まる。テニミュのメインディッシュだ。直近が新テニミュや3rdの全国大会だった分、その派手な演出と比べてしまいそうにもなるが、VS不動峰はいわゆる「テニヌ化」する前なので、そこほど派手な試合展開ではない。しかし、そのことがかえって爽やかさを強調するような結果になったのではないだろうか。もちろん、Winning Shot(仮)やHang in there(仮)など、歌唱面で熱さも忘れていない。特に後者は不動峰の「校歌」だと思われるが、ユニゾンの厚みが迫力を支えていた。*6しかし全体としては「爽やかさ」の方が上回っていた。これは、リョーマ・桃城VS玉林の泉・布川戦が終わった後の「またダブルスやりたくなったら、いつでもストリートテニスコートに来いよ」という言葉にもあるように、この地区大会の段階では、まだ皆「遊び・いつもの部活の延長線上」みたいな感覚が残っているからかもしれない。全国大会ではそんなことは言ってられないだろう。

そしてここでも「ピンスポや打球音がなくてもちゃんとテニミュが成立している」ことを実感した。ちゃんと試合にのめりこめる。神尾ソロで二年が一斉に駆け出して一緒にステップを踏み踊る(伊武だけはポケットに手を突っ込みながら、足のステップはやっている)ところでこれだよこれ~~!!と感じた。先述の通り音の感じは3rdまでとかなり違いがあるし、歌詞も明らかに作詞者の違いを感じさせられたが、根幹の楽しさが変わっていないとわかって安心できた。伊武のソロは、今までのスポット曲にないポエトリーリーディング的要素を取り入れたゆったりしたテンポの曲で、「今のリョーマには時間がないのにこいつめっちゃ邪魔するし煽ってくるやん!!」と一層感じられた。そしてそれをなぎ倒すところにはやはり爽快感があった。

ただ一点気になったのが、鉄のラケットに貼られていた薄いスクリーンのようなものがあまり有効活用されていないように思えたところである。このスクリーンあってもなくてもそんなに変わらないのでは……?と思いながら見ていた。これも演出側の意図が知りたい。

 

今回のVS不動峰は、地区大会が終わった後、手塚がリョーマと試合させてほしい旨を竜崎先生に頼むシーン、その一方で「月刊プロテニス」記者の井上守さんが越前南次郎と出会い、南次郎から今のリョーマの課題が語られるシーンで幕を閉じる。大事な大事なシーンである高架下の戦いもがっつり尺割いてくれるであろうことへの期待と、南次郎以外の大人の存在によって物語に客観的な視点が増えたことを同時に感じていた。特に南次郎のシーンは、映画リョーマ!を見た後だと余計にリョーマの師匠としての彼の焦りが見えてきた。

そして何より素直に、この続きを早く見せてくれと心が叫んでいた。

 

キャストのこと

(以下キャストのことは全員キャラクター名で記述します)

特に印象的だった人たちだけだがざっくり記録しておこうと思う。

桃は新テニミュからの続投だったが本当に成長率がすごい。でも多分まだ何か隠し持ってそう。11代目青学がいつまで活動するかはわからないけどなるべく長く居てほしい。

菊丸は本当に、本当に手数が多い。今回みんなこなれたベンチワークだな?と思いつつも特に目を惹くことをやり続けてきたのが菊丸だったと思う。「俺あそこ(不動峰)の顧問きら~~~~い」ですごい顔になってたのがよかった。

多分皆乾にうっすらガチ恋なんだと思う。フレンドリーさとどこか放っておけない感じがよかった。

伊武はお披露目会あたりからずっと言われてたけどめっちゃ伊武だった。びっくりした。

内村のダンスがシャキシャキしててよかった。アンコールの自己紹介曲で毎回ビビってた。

 

おわりに

べた褒め8:不安感2みたいな文章でしたが、これからどうなるのかはすごく興味があります。シーズンが始まったばかりで過去のシーズンと比較するにも情報量が足りませんし、全肯定するにも全否定するにも時期尚早感が否めないので、ひとまず楽しみながら見守っていこうという考えを文章にしてみました。今はあまり製作者サイドから直接色々な言及が聞けてないので(キャストの発言経由で知ることはある)、特に演出に関して色々直接知りたいことが多いです。序盤の空気感も相まって3rdまでよりもさっぱりした爽やかさを感じることが多かったのですがそれが意図的なのか……とか。

最後に一つ。今、過去曲に対する未練が全くないと言えば嘘になるので、Force of Gravity(仮)で一瞬Do Your Best!のフレーズが出てきたときはそうそうこういうのでいいんだよ……ってなりましたし、ドリライで歌ってくれることがあれば悔いはないな……と思っています。おれにも生のマリオネットを聞かせておくれ~~……

*1:リアタイで追い始めたのは新テニミュから

*2:4thルド公演で絶対に生のマリオネットを聴いてやると意気込んでいた

*3:映画リョーマ!がタイムスリップする映画だという情報が与えられ、本誌ではボルクによってお頭がタイムループに飲み込まれる展開が繰り広げられるこの時期にこの演出が見られたことは偶然かもしれないが、「オールテニプリ」の波動を感じた

*4:たとえばVS山吹だと竜崎先生vs伴爺の場外戦も含めて魅力的な試合なので、そういう場面でどう感じるんだろう……と脳裏をよぎった

*5:その後地区大会で九鬼にも突っかかろうとしているので、一番キレやすくて一番心の中の橘さんが占める割合がデカいのが伊武なのでは?と思った

*6:欲を言えば前者はラケットを持って歌ってほしかった。ラブ!フィフティーン!サーティー!フォーティー!って言ってるし